この間ふとした時に、昔お茶の先生から聞いた話のことを思い出したので、今日はそのことについて書こうと思います。
と言っても大したことではないので、もったいぶらずにさっさと書いてしまいましょう。
私が先生から教わったのは、タイトルにある七種の蓋置の覚え方でした。
記憶の通りに書いていきます。
「
三つのものは三つ有り」
「
海のものは二つ有り」
「
一つのものも二つ有る」
三つのものは「
三つ葉」「
三閑人」「
五徳」(五徳の爪は三本あるので)の事ですね。
そして海のものは「
栄螺」と「
蟹」です。
一つのものは「
一閑人」と「
火舎香炉」の三つです。
と、それだけでは内容も何もあったものではないので、ちょっとこの蓋置たちについてちょっと説明をしていきましょう。
蓋置の本来は輪の形をしたもので、現在の皆具の内の一つになっているものがそうですね。
本来は仏具の為、華美な装飾は無かったものの、肩や胴に筋がある程度の装飾は見られたます。
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これの小さい道具がそうですね。
その後、この皆具というものは、茶の湯の世界のものとなります。
水指、杓立や建水(翻とも)には、使用上一定の形が必要とされる為、用いられる器の形には制限がありましたが、蓋置の用途は釜の蓋を置ければいいだけなので、形は千差万別でした。
特に茶人たちは、違う世界のものを茶の世界に取り入れることによって、「見立ての文化」を生み出したとも言えるでしょう。
この時代の人たちの違う世界とは何だったのでしょうか?
茶の湯よりも古い文化としては、まずは「能の世界」があります。
※「能」という言葉よりも「猿楽」という言葉でもいいのかもしれません。
次にあるのが「連歌の世界」ですね。
武野紹鴎が最初に目指したのが連歌師ですから、割と近い世界だったのかもしれませんね。
さて、能の世界のものといえば、多くは衣装や扇子と言ったところでしょうか、なので蓋置に丁度良い道具があまり見つけることができません。
では連歌の世界ではどうでしょうか?
筆や硯などの文具には、凝ったものも多く見られました。
前置きが長くなりましたね。
まあ周知の通り、蓋置には文具由来のものが多くあります。
先ほどの蓋置のうち、「蟹」は文鎮から、「一閑人」「三つ葉」「三ッ人形」は筆置きから見立てたものだと言われています。
「栄螺」は文鎮からとも水滴からとも言われていますが、はっきりしないです。
「火舎香炉」はそのまま仏具です。
仏具屋さんに行けば普通に見ることができる、仏前に香を供える為の道具です。
その為、七種の中では最も格式が高いと言われています。
最後の「五徳」ですが、これはそのまま炉中にあった釜を据える道具「五徳」を蓋置のサイズに変更したものです。これは他の道具からの転用という訳ではないのですが、別名があります。
それは「隠家(いんか)、陰架、隠架」という名です。
言葉の意味は「茶釜の陰に隠れるもの」として蓋置全般を指すこともありますが、多くは五徳の蓋置に対して使う呼称です。
炉中にあっても釜の底にあって見えなく、蓋置として席中にあっても釜蓋の下で見えないところからの名称ですね。茶人らしい命名です。
それとは違う名称に別称に「火卓」というものもあります。
これは炉中にある最中をそのまま表現した名称です。
蓋置は調べるのも見るのも楽しい道具です。
この機会に、蓋置のコレクションを楽しんでみれば如何でしょうか?